冷水塔RaySui-kun作成/湿球温度計算

夏場の水耕栽培では、水温が35℃近くまで上昇していました。なんとか枯れずに過ごせましたが、キュウリの収穫量はその時期減ってしまいました。調べてみるとキュウリ水耕栽培の至適水温は20~25℃とのこと。現在作成している水耕栽培管理システムには冷却機能が無いので、冷水塔を作ることにしました。

冷水塔は、水を上から降らせて、下から空気を当てて、水の一部を蒸発させることで潜熱を奪って水を冷却する装置で、化学工場なんかでよく見られます。

調べてみると、一般的に冷水塔は湿球温度と水温差が5℃程度まで冷却できるようです。まあ水の潜熱で冷却するので、そんなもんでしょうね。この温度差5℃を冷水塔運転の基準としようと思います。

水温の方は温度計で実測できるので悩まないですが、問題は湿球温度です。

乾球湿球温度計

湿球温度計は上の写真の右側にあるようなやつです。濡れたガーゼを温度計にあてて、その時の湿度に応じた水の揮発量による潜熱の除去とそれに対応した温度が表示されるものです。サーミスタを濡れたガーゼに突っ込んでおけば、同様のものが作れるとは思いますが、常に水の補給が必要になってきます。維持管理が大変なので、別の方法を考えることにしました。

湿球温度

電子工作でよく見かける温度計は、DHT22のように温度計と相対湿度計が一緒になったものです。乾球温度と相対湿度はこれで簡単に取り出せます。ところで、乾球温度、相対湿度と湿球温度には相関関係があります。乾球湿球温度計は、乾球温度と湿球温度の差から湿度を読み取るものです。その関係は、上の写真でも、温度計の真ん中に表として記載されています。これらの相関式を作れば、DHT22の温度と相対湿度から、湿球温度を簡単に計算できると考えました。調べてみると、Tetensの式、Sprungの式を使って式を立て、二分法やニュートン法で解を求める方法があるようですが、電子工作初心者にはハードルが高いので、2次関数の相関式としてスケッチが簡単になるものを目指します。

湿度計算表/蚕糸試験場彙報第67号、1954年12月

相関式を求める為のデータは、蚕糸試験場の彙報として農水省のデータベース、Agriknowledgeで公開されている湿度計算表を使いました。

湿度計算表/蚕糸試験場彙報第67号

発行は1954年なんですよね。終戦が1945年なので、10年も経ってないです。昔の技術者はすごいですね。中身は、0~100℃の範囲で湿球温度と乾球温度、その時の相対湿度が乾球温度0.5℃間隔で記載されています。これを使って相関式を作ります。

湿球温度と相対湿度をプロットすると、2次曲線の近似式を作ることが出来ます。R2値で0.9998なので、実用上は十分です。例えば乾球温度が35℃の時の相関は下の表のようになります。湿度100%では乾球温度と湿球温度が一致するので、そこを上限とした2次曲線です。

同様の相関関係は、どの乾球温度でも見られます。問題は、乾球温度ごとに相対湿度と湿球温度の相関式が変わることと、相関する湿球温度の範囲が変わる、という2点です。乾球温度が低い方が、相対湿度0~100%に相当する湿球温度の範囲が狭く、乾球温度が高い方が範囲が広い傾向にあります。乾球湿球温度計の真ん中の表の緑のエリアが、温度が高い方が広いことがそれにあたります。

仕方がないので、各乾球温度での相関式のマトリックスを作ろうと思って、実用上必要な温度範囲(10~50℃)について相関式を並べたところ、乾球温度と各相関式の係数に、相関があることが分かりました。

ある乾球温度tでの相対湿度hと湿球温度Ttの相関式は、2次式の係数をa、b、cとすると、
Tt = a x h2 + b x h + c
となります。乾球温度tでの湿球温度Ttと相対湿度hの相関式を並べてプロットすると、乾球温度tと係数a、b、cの間にそれぞれ次のような相関がみられました。

それぞれのR2値も0.999あり、実用上は問題ないです。このことから、任意の乾球温度tでの湿球温度Ttと相対湿度hの相関式の係数a、b、cを計算することが出来るようになりました。これはなかなか興味深くて、それぞれの乾球温度での湿球温度の範囲の変化を無視することが出来ます。整理すると、

t:乾球温度(℃)
T:湿球温度(℃)
Tt:乾球温度tにおける湿球温度(℃)
h:相対湿度(%)
a, b, c :湿球温度と相対湿度の相関式(2次式)の係数
da,b,c 、ea,b,c、fa,b,c:乾球温度と係数a、b、cの相関式の係数
として、

Tt = a x h2 + b x h + c (1)
a = da x t2 + ea x t + fa (2)
b = db x t2 + eb x t + fb (3)
c = dc x t2 + ec x t + fc (4)

da,b,c 、ea,b,c、fa,b,cの数値は以下の通り。

def
a-7.8802E-074.3768E-06-1.0326E-04
b9.8819E-053.5766E-036.1947E-02
c-2.4411E-036.0908E-01-5.2169E+00

a、b、cの各式(2),(3),(4)に係数を代入すると、

at = -7.8802E-07 x t2 + 4.3768E-06 x t + -1.0326E-04
bt = 9.8819E-05 x t2 + 3.5766E-03 x t + 6.1947E-02
ct = -2.4411E-03 x t2 + 6.0908E-01 x t + -5.2169

ここで求めたa、b、cを式(1)に代入すると、任意の乾球温度tにおける湿球温度Ttを計算する式(5)を得ることができます。ただし、計算できる乾球温度範囲は、相関を取った10~50℃の間です。a、b、cの値は乾球温度tによって変化するので、at、bt、ctと書くべきですね。

Tt = at x h2 + bt x h + ct     (5)

得られた式(5)に、その時の相対湿度(%)を代入することで、任意の乾球温度t、相対湿度hにおける湿球温度Ttの値を計算することが出来ます。

例えば乾球温度28.7℃、相対湿度66.9%で計算すると、下のようになります。

計算結果は、web上で公開されている計算サイト、例えばSoftflowさんの湿球温度計算機での計算結果とほぼ一致します。

湿球温度計算機/Softflow
https://www.softflow.jp/tech-forum/wet-bulb-calculator/

本当はニュートン法とかC++で書けるといいんだろうけどなあ。初心者にはハードルが高かったので、とりあえず2次式の相関式で作ってみました。

長くなりそうなので、とりあえずここまで。
次はスケッチかな。

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しろすけ技術研究所
主任研究員

こんにちは。市民農園で野菜作りをしているしろすけです。極小規模の栽培管理システム開発をいつかやってみたいと思っていました。2024年から育苗ケース給排気温調や、水耕栽培管理システムの試作を電子工作で始めました。想像以上に検討することがあったので、記録を残すことにします。バイク(SR400)と耕運機(FV200)の整備記録もついでに記録に残しておきます。


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